鈴木酒造店長井蔵、鈴木大介社長に聞く IKKONの楽しみ方 最終回

 

プロに聞く、
器とお酒の新しい一献スタイル。

 

酒蔵の視点から
IKKONと日本酒について
語っていただく3回シリーズも、
いよいよ最終回となりました。

鈴木酒造店長井蔵の代表取締役であり、
自ら杜氏として日本酒を醸す
鈴木大介さんによる、
奥が深い日本酒と器のお話。
酒造りの今後についても伺いました。
どうぞお楽しみください。

 


――今後はどんなお酒の味を追求していきたいですか?

コメと酵母の組み合わせは無限にあり、それによってできる有機酸の組成もみな違います。これまでの経験からコメと酵母はある程度固定してきたので、次は有機酸の種類によって貯蔵の温度や期間を変えることを試したいと考えています。

また、アミノ酸は23種類ありますが、そのうち20種類は苦み、残りの3種類が甘味を出します。このアミノ酸由来の「甘さ」が日本酒から検出されるのは、これまで閾値以下だと言われていましたが、最近の研究でどうもそうじゃないということが分かってきました。
中でもうちのお酒はそれが比較的高いんです。このアミノ酸の甘味を数字でしっかりとらえて洗練させることができれば、うちの強みになると思っています。

 

――販売面でも新しいアイデアをお持ちだそうですね。

ラベルにQRコードをつけて、購入した方にうちのサイトに来てもらい、そこで商品の詳しい説明やどんな料理と合うかなどの情報を提供することを考えています。そうやってお客様と直接つながってコミュニケーションのパイプを太くしていかないと、生き残れないと思うからです。一部では日本酒ブームなどと言われますが、実際には全国の酒類販売量のうち、日本酒が占める割合は7%を切っているんですよ。専門店を含めてきちんと商品説明できる販売員も減っていますし、日本酒の売り場自体もどんどん減っています。

人口減少が続く地方だけでは売り上げが立たず、廃業する蔵元は後を絶ちません。だからといって東京に出せば、全国の銘柄と競合します。そして、その東京の人口もオリンピックの数年後には減り始めますから、ますます狭いエリアでの競争になる。だから、それまでに自分のブランドを確立しておく必要があると考えています。

 

――日本酒のシェアがそんなに少ないとは驚きです。ビールや酎ハイの方が人気ということですね。

焼酎の方が糖分が少ないからダイエットや健康にいい、というイメージもあるのではないでしょうか。実際には、甘いと言われる日本酒でも糖分は3%。うちのお酒は糖濃度1%以下なんですよ。一方、日本酒にはアミノ酸など身体にいい有効成分が入っています。この辺も、もう少し宣伝しないといけませんね。

 

――福島県浪江町請戸にあった鈴木酒造店ですが、津波による被害と原発事故避難のため山形県長井市に移ってもう7年になります。でも、鈴木さんの心はずっと浪江とともにあったように思います。今年、浪江産米で作った販売用のお酒としては震災後初の、「ランドマーク 浪江の酒」を出されましたね。


ええ、今回は仕込み水も浪江から運んできて、必要な材料はすべて浪江産で作りました。
浪江町内では2014年度からコメの実証栽培が始まり、初年度から放射性物質は検出されていません。それ以来ずっと非売品の広報用として浪江産米の日本酒を作ってきましたが、昨年(2017年3月末)とうとう一部で避難指示が解除されたこともあり、今年はいよいよ販売用のものを作ることができました。

ちなみに、この「ランドマーク 浪江の酒」は味わいタイプの純米吟醸なので、IKKONで楽しむならラウンドタイプがオススメですよ(笑)。

――どうもありがとうございました。

 

 

 

鈴木酒造店

IKKONが採用する二重焼きは、福島県浪江町の伝統的工芸品、大堀相馬焼の特徴でもあります。同じ浪江町の請戸(うけど)地区にあった鈴木酒造店(本蔵)は、東日本大震災の津波で全建屋が流出し、続く原発事故で休業を余儀なくされました。鈴木さん一家は山形県長井市に移り、現地で長い歴史を持つ東洋酒造の全株式を取得、2011年12月より「鈴木酒造店長井蔵」と名称を変更して酒造りを再開しました。永らく浪江町で愛されてきた「磐城壽」、そして東洋酒造から引き継いだ「一生幸福」を主要銘柄としています。

ホームページ:http://www.iw-kotobuki.co.jp/